大人の RIKA 教室

H26 年春期 第 2 回 (5 月 17 日)「藤前干潟見学会— 水鳥と湿地と私たちの未来 —」

講演会お知らせ
講師
寺井 久慈 元中部大学 応用生物学部 教授、現名古屋大学博物館研究協力者
日時
5 月 17 日 (土) 10:00~15:00
場所
藤前活動センター
場所につきましては、お知らせの 2 ページ面参照下さい。

干潟は海への浄化フィルター

~豊かな土壌・水質環境を維持するために~

平成 26 年 5 月 24 日環境省は「干潟・湿地の経済的資産はおよそ 1 兆 5 千億円」と発表しました。

1990 年代までに干潟の 4 割、湿地の 6 割が消失してしまっています。

今回の藤前干潟観察会はそのような貴重な干潟が名古屋市に残された経緯と実態を体験学習するために開催されました。

歴史的経緯:藤前干潟と名古屋市のゴミ事業、ラムサール条約

藤前干潟の航空写真

(Wikipedia より)

藤前干潟は、庄内川・新川・日光川の三川の河口が合流し海へ流れ込む地点に広がる干潟です。

1950 年代以前には藤前干潟がある伊勢湾最奥部には広大な干潟が広がっていたが、港湾開発・工場用地・農業用地の埋立開発により、そのほとんどが消滅。

2001 年に名古屋市がゴミ埋め立てを依頼している多治見市の愛岐処分場が満杯になることが予想されたことから、藤前干潟を埋め立てて、ゴミ処理後の焼却灰を埋め立てる計画が出されました。

1997 年には可燃ゴミ焼却のための施設「新南陽工場」が建設されました。

1999 年、名古屋市は藤前干潟埋め立ての断念により「ごみ非常事態」を宣言。

渡り鳥の中継地として重要な役目を果たしている藤前干潟の重要性とともに名古屋市が埋め立てを回避してゴミ減量に転換した環境保全姿勢が評価されて、藤前干潟は 2002 年ラムサール条約湿地に登録され、保全されることになりました。

名古屋のゴミは分別を進めることになり、不燃ゴミ・可燃ゴミ・資源ゴミに分別をしてプラスチックなどの資源ゴミは積極的にリサイクルを行うことにより、ゴミの一層の減量を進めることになりました。

記憶に新しい方も多い、2005 年愛・地球博が行われたころの話です。

ゴミ焼却工場 (南陽工場) とモリゾー (当日開かれた干潟の「クリーン大作戦」に参加するために歩いて堤防に向かうモリゾー)

会場の藤前活動センター。すぐ後ろにゴミ焼却工場 (南陽工場) が見えます。

「クリーンアップ大作戦」の様子 当日は午前中、堤防下で「クリーンアップ大作戦」(清掃ボランティア活動) が行われていました。
講演の様子 熱心に清掃ボランティア活動を行う方々。
モリゾーとキッコロ 清掃ボランティア活動を応援してセンターに戻ってきたモリゾーとキッコロさんたち。

ウミガメは、海中に漂うレジ袋をクラゲと間違えて呑み込み、満腹を感じてしまうため、餓死してしまう例があるそうです。

海に自然に帰らないゴミを捨てることは、大変に罪なことです。

寺井先生による講演 (10 時~11 時半)

堤防の上から海の眺め 堤防の上から海を眺めます。10 時現在まだ干潟は現れていません。

10 時から寺井先生より、「藤前干潟に学伊勢湾の環境問題」と題し、講演をしていただきました。

講演の様子
講演の様子

寺井先生が藤前干潟の観察を始められたのは 1994 年からです。

干潟には多様な動植物の生態系が存在し、プランクトン→エビ・カニ→魚→鳥といった食物連鎖が成り立っており、その過程で生物が土壌・水質のフィルター役を果たし、浄化に大きな役目を果たしています。

オキシジミ

オキシジミ
  • マルスダレガイ科
  • Cyclina sinensis GMELIN
  • 分布:房総半島以南の内湾奥部の潮間帯の泥底
  • 殻は周縁で紫色を帯びることが多い。灰白色の個体もあるが日本では少ない。食用となるが、美味でない。

ヤマトシジミ

ヤマトシジミ
  • シジミ科
  • Corbicula japonica PRIME
  • 分布:全国の河口・潟などの汽水域の砂泥
  • 殻表は強い光沢が有り、輪肋がある。幼貝では黄褐色のことが多く時々放射色帯がある。卵生。食用となる。

アサリ・オキシジミ・ヤマトシジミといった二枚貝の果たすフィルター効果、水質浄化作用について長年研究の結果、アサリが水質浄化の働きが大きいことが分かっている。

アナジャコ アナジャコは藤前干潟を埋め立てから守った大きな立役者である。

アナジャコは、干潟に穴を掘って生息している。

水中の有機物を捕食しているため、水質浄化にはが大きく貢献していることが分かっている。

台風などの直撃を受けると、貧酸素水塊という深みが出来、これによってアナジャコが大量死する。

干潟がこれ以上埋め立てが進むと、アナジャコが減少し、有機物分解による水質の浄化能力が損なわれ、海への有機物の流入が懸念されることになる。

これは環境アセスメントを行う上で大きな成果であった。

伊勢・三河湾の貧酸素状況 (愛知県水産試験場 HP より)

2005 年 7 月 伊勢・三河湾の貧酸素状況 2005 年 7 月
2006 年 8 月 伊勢・三河湾の貧酸素状況 2006 年 8 月

観測会 (13:00~)

昼食後、干潟観察を開始しました。

晴天に恵まれ、絶好の観測日和でした。

13:30 には干潮を迎え、干潟が顔を出しました。

観測会の様子 澪を歩いて渡ります。
観測会の様子 晴天に恵まれて観察日和です。
観測会の様子
観測会の様子 アナジャコなどの生息する穴、30㎝以上深く潜っています。
観測会の様子 ヤマトシジミを集めて観察される寺井先生
観測会で採取したカニの様子 カニ
観測会の様子 干潟から眺めた南陽ゴミ焼却場
オキシジミ、ヤマトシジミ、カニ

オキシジミ、ヤマトシジミ、カニ。清掃工場からの下水に含まれる有機物を分解し水と土壌を浄化する大切な役割があります。このような生き物が沢山健康に生息しているほど、きれいな水循環環境が実現されます。干潟は陸地 (工業などの人間生活) と海をつなぐいわば“フィルター”の役割を果たします。

観測会の様子 ヤドカリ
観測会の様子 藻の状況を観察される寺井先生
観測会の様子
観測会の様子
観測会の様子
観測会の様子 この日の最大のシジミ。観察後は干潟に戻しました。
観測会の様子
観測会の様子 ホトトギスガイ。残念ながら環境の汚染度が進むと発生する貝です。
観測会の様子
観測会の様子 ゴカイの穴とチドリの足跡。
観測会の様子 可燃ゴミ焼却場のすぐそばに広がる干潟。
観測会の様子 チドリの足跡。ゴカイなどを探して歩いた様子がうかがえます。
観測会の様子

表面の緑色はカニなどのエサになる藻です。有機物の含有状況 (下水環境) が分かります。

観測会の様子
観測会の様子 人を避けるように離れたところにいるサギ。

☆藤前活動センター

講演の様子 センター内展示。子どもと一緒に干潟の生き物について学ぶことができます。
運営母体
環境省
住所
愛知県名古屋市港区藤前 2 丁 202 番地
電話番号
052-309-7260
開館時間
09:00~16:30
入館料
無料
休館日
月曜日
URL
http://fujimae.org/modules/pico1/index.php?content_id=65

参加者の感想

  • いままで、たびたび機会があったにもかかわらず、藤前干潟に初めて足を踏み入ることができて、感動していました。
  • 大きな生命体 (地球) の上では、人間は “はかない” 存在だとも、考えさせられました。

  • 実際に、干潟に入って歩いて、手に触れてみて、自然の貴重さを実感できたように思います。
  • 生き物が多様に生活している有様を見るにつけ、本当に、この干潟がのこって良かったなと思いました。

  • いろんな種類の野鳥を見たかったのですが鳥は非常に数が少なかったのが残念です。

  • 寺井先生の「混ぜればゴミ 分ければ資源!」については思わず頷きました。
  • 帰ってから家族に報告したところ、「そうだよね。行政や企業の責任に負うことも一つだろうけど、一人一人の意識に行き着くんだよね」と意気投合でした。
  • 同じ地域の方でも知らない人もおりもっともっと広く実情知らしめる活動が必要と感じました。

  • 藤前干潟は都市型河川の庄内川・新川と伊勢湾最奥部の海水の合流点にあり、水質汚染の浄化作用も大事な観点であることが分かりました。
  • 干上がると色々な生物が動き回っているのではと考えていましたが、皆、巣穴に潜り、スコップで掘っても届かない深さまで逃げ込んでいました。
  • 寺井先生に藤前干潟の保全の歴史や意義、また、それに関わられた経験をお聞きし、理解が深まりました。
  • 観察のポイントや干潮の時間の確認方法なども教えていただいたので、底生生物の活動がどのように変化しているのか、機会をみて再訪したいと考えています。

  • 藤前干潟のことは、ニュースなどで知っておりましたが、実際に訪れたのは今回が初めてでした。
  • 思ったより大変広範囲に潮が引き、干潟を歩いて観察するのを楽しみました。
  • 干潟を掘ってみますと、先生の講義にあったシジミがたくさん出てきました。
  • そのほか、小さな水溜りにもエビやハゼの仲間の魚などがいて、少しの時間掘ってみただけでも、干潟にはたくさんの生物が住んでいることがよくわかりました。
  • 講義を聴き、人間がその干潟を汚していることも改めてわかりました。
  • ボランティアの方々が、ちょうどこの日にお掃除をしてくださっていて、この自然を守っていただいている方々がいるということも、改めて知ることができました。
  • 干潟に住むたくさんの小さな生物たちの命を守るために、私も今まで以上に生活排水に気を配り、少しでも自然にかえりやすくしなくてはいけないと思いました。

  • 近郊にもラムサール条約の登録の湿地、干潟があることに感銘を受け、貴重な体験ができました。ありがとうございました。
  • 天候も良く干潟の中でも風が心地よく暑さも気になりませんでした。干潟には貴重な生き物があり改めて生活排水、ゴミの減量に務めていかなければと考えさせられました。


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後援:春日井市教育委員会