大人の RIKA 教室

H26 年春期 第 5 回 (9 月 12 日)「スーパーカミオカンデ見学会」

日時
9 月 12 日 (金)
場所
岐阜県飛騨市神岡町 東京大学宇宙線研究所

スーパーカミオカンデはニュートリノを検出できる世界最大の装置

スーパーカミオカンデは、世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置です。1991年に建設が始まり、5年間にわたる建設期間を経たのち、1996年4月より観測を開始しました。スーパーカミオカンデ実験は、東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設を中心に、日本、アメリカ、韓国、中国、ポーランド、スペインの約30の大学や研究機関との共同研究で行われています。

スーパーカミオカンデ検出器は、5万トンの超純水を蓄えた、直径39.3m、高さ41.4mの円筒形水タンクと、その壁に設置された光電子増倍管と呼ばれる,約1万2千本の光センサーなどから構成されています。岐阜県飛騨市神岡鉱山内の地下1000mに位置しています。

(以上『スーパーカミオカンデ実験概要』 より転載)

講演要旨

ニュートリノとは

「物質を構成する最小単位は原子である」と中学校理科で学びます。実は原子を構成するものは中性子と陽子であることがパウリを始めとする 19 世紀以降の核物理で分かってきています。その中性子や陽子を構成する物質が粒子の仲間と (クォーク) 電子の仲間 (レプトン) であることが分かっています。これら最小単位の粒子のうち、電気をもたない粒子がニュートリノです。電気的に中性であることからニュートロンと呼ばれていました。

ニュートリノの存在は理論的に証明されていましたが、その存在を実験的に見ることは極めて困難でした。ニュートリノには質量がなく他の物質と相互作用をしないため、我々の身体を通り抜けても痕跡を残さず、 我々は全く気付かないからです。

講演の様子

ニュートリノの存在を確認することは宇宙創成、物質の究極の成り立ちといった謎を探ることにつながるため大変重要な意味があります。

ニュートリノは 1 秒間に数兆個、この地上に降り注いでいます。主に太陽から降り注いでおり、我々の身体も常に貫通しています。ニュートリノは質量がほとんどなく、相互作用を及ぼさないため、全ての物質を貫通します。我々の身体にも 1 cm2 あたり 1 秒間に 660 億個のニュートリノが降り注いでいますが、我々の体内に含まれる水分子の中の陽子や中性子とニュートリノがたまたま衝突するような可能性は、せいぜい 1 ヶ月に 1 回くらいですから、ほとんど影響は及ぼさないと言えます。

なぜスーパーカミオカンデが特別なのか

スーパーカミオカンデは神岡鉱山内、入口から水平方向に 2 km のトンネル内部に設置されています。これは私たちの生活している日常空間には宇宙線がたくさん降り注いでいますが、山の中まで通過できる宇宙線はごくわずかになるためです。ニュートリノは電気的に中性で他の物質と干渉せずどのような場所であっても何にも遮られず直線的に通過します。

他の宇宙線 (ニュートリノを観測するにはノイズとなる) を避けるため 1 km の山中に建設。到達する宇宙線の数は 10 万分の 1 に減少します。

スーパーカミオカンデ検出器の原理

光電子倍増管
光電子倍増管

光電子増倍管とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管に、電子増倍機能を付加した高感度光検出器で、月面で懐中電灯を点すと地球から見分けられるほどの高感度です。スーパーカミオカンデ施設で用いられている光電子増倍管は直径 50 cm、世界最大の大きさを誇り、寿命は半永久的です。

講演の様子

原子の中は陽子と中性子、電子で構成されていますが、実際は電子や陽子、中性子の間は非常に広く、物質の中はスカスカな状態です。

チェレンコフ光と水中のニュートリノ

このようにほとんどのニュートリノは、物質と相互作用をせず、物質の中をほぼすり抜けますが、例えば水中を通過する際に、水分子を構成する原子の中性子や陽子とごく稀に衝突することがあります。水分子中の中性子や陽子と衝突したニュートリノは、ミューオンや電子などの物質に変化し、それらが水中を光速よりも早い速度で走るときにチェレンコフ光 (粒子が光より速く走ると出てくる光、水の中では光速は真空中の 4 分の 3 にまで減速するため。水中を光より速く走る粒子が存在する) が発生します。このチェレンコフ光を観測すれば、これによりニュートリノの存在が可視化できるという理論が成り立ちます。

「大量の水を満たしたタンクの中にこの光電子倍増管をたくさん設置すれば、そこに偶然飛んでくるごくわずかのニュートリノを検出できる」との理論の下 (ノーベル賞受賞者の小柴昌俊氏提唱)、“カミオカンデ”施設で 1987 年に宇宙から降り注ぐニュートリノが初めて観測されました。

その後 1996 年に建設された“スーパーカミオカンデ”施設は光電子倍増管を 1 万個以上貼り付けた直径 40 m、深さ 41.4 m のタンクは、世界最大のニュートリノ検出装置です。

スーパーカミオカンデ施設では 1 日に約 30 回、中性子や陽子と反応したニュートリノが検出されます。1 日に 30 個程度のニュートリノがタンク内で反応して、どこから入ってどこへ向かったか記録されています。

スーパーカミオカンデ実験施設が設置されたことによる大きな研究成果は、1998 年の「ニュートリノ振動」(ニュートリノが飛行する間にその種類が変化する現象) の発見です。また 2001 年には、「太陽ニュートリノ振動」が発見されました。

タンクの中には 5 万トンの超純水があり、大体気温と同じ 13℃に保たれ、1 ヶ月で全体が入れ替わっています。スーパーカミオカンデ研究施設の立地は山の中のため、実験に必要な水が豊富にあることが大きな立地条件の一つです。実験施設内で、山の湧水から実験に使用する超純水を生成しています。

講演の様子

スーパーカミオカンデで働く研究員は現在およそ 120 人 (日本人 70 人、アメリカ人) です。施設内で監視をする担当は交代で行い、24 時間稼働しています。データは外部に送られ研究チームで共有されます。

超新星爆発があれば大量のニュートリノが 10 秒間ほど降り注ぐため、スーパーカミオカンデで大量に検出されることになります。ベテルギウスが近い将来爆発することが予想されていますが、それらの観測も可能になるわけです。

施設の場所・航空写真
T2K 東海 - 神岡間長基線ニュートリノ振動実験

スーパーカミオカンデは 1998 年、大気ニュートリノの観測により、ミューニュートリノが飛行中に別の種類のニュートリノに変化する、「ニュートリノ振動」という現象を発見しました。このニュートリノ振動観測のため、遠隔 (1999 年~2004 年 K2K 実験:つくば市~神岡町間、現在は T2K 実験:東海村~神岡町間) からスーパーカミオカンデに向かってニュートリノビームが発射されています。T2K 実験は K2K 実験の約 50 倍のニュートリノビーム。このビームは地球の曲率のため主に地中を走っています。

(『T2K実験』より)

破損事故を超えて

2001 年、1 個の光電子増倍管の衝撃波による連鎖破壊で、光電子増倍管の約 70% を損失するという大規模な破損事故が起き、2006 年に復興されました。衝撃波による連鎖破壊が起きないよう、全ての光電子倍増管にプラスチックカバーが被覆されました。

スーパーカミオカンデの将来・展望・構想

東京大学宇宙線研究所は、宇宙から降り注ぐ宇宙線を観測するために設立されました。重力波の測定などを行い、研究観察が進むにつれ、

スーパーカミオカンデ施設の実験目的:
講演の様子
  • ニュートリノの性質を解明→宇宙開闢時の物質生成について解明する
  • 太陽ニュートリノを観測→太陽内部の活動について解明する
  • 超新星爆発からのニュートリノを観察→超新星の爆発過程を解明する
  • 陽子崩壊現象を解明→物質にはたらく力をまとめる大統一理論を解明する

といった“宇宙全体”を対象とした研究施設になりました。

将来的に、ハイパーカミオカンデ (現存装置の 4 倍の大きさ) 構想が計画中されています。

質問

記念撮影 参加者全員での記念撮影
Q
1 日に 30 個のニュートリノが検出されるそうですが、全て太陽から来ると考えてよいのですか。
A
ほんの一部のニュートリノが水を蹴飛ばして (光を発生) います。15 個は太陽ニュートリノ、15 個は大気中ニュートリノです。
Q
太陽が地球の裏側にある時も同じように届いているのですか。
A
そうです。地球の影響でなくなる確率は 100 億分の 1 です。
Q
太陽からの光は 8 分かかって地上に届いていると聞きましたが、これはニュートリノと同じなのですか。
A
太陽の中心では核融合が行われ、光やニュートリノが発生しています。太陽内部の光は数十万年かかって地球に届いているが、ニュートリノはすぐさま届いています。黒点数などは表面の観察であって、ニュートリノとは関係ないです。
施設の周辺の環境 スーパーカミオカンデの周囲、豊かな自然に囲まれた山奥に位置します
施設の周辺の環境
施設の周辺の環境

参加者の感想 抜粋

  • 多感で純真無垢な少年だった頃の、アインシュタイン相対性理論で時間が速くなったり遅くなったり時間が戻り過去や未来を覗けるという甘い想いから、あれから? 十年、オトナになるにつれ「そんなこと不可能」などと現実とのズレを感じていました。光電子倍増管の実物を拝見しご説明を伺い、理解には程遠い状況ですが、引き続きロマンを追い求め続けるシニア少年になれそうです。
  • 今回の見学では大変お世話になり有難うございました。お陰さまで貴重な経験を得ることができました。
  • 見学では、 最先端の科学の現場を自分の目で見ることができ、大きく感激いたしました。殆んどのことが、 未だ分かっていないと言う事が、 逆に面白いと思い、「知るを楽しむ」ことの感激を味わうことができました。
  • 極小の事象を追及して行くと、 極大の宇宙の問題に繋がって行く様子に、不思議な感覚を覚えました。さらに、 宇宙の生い立ちや、 素粒子の挙動に興味がわいてきました。これからも、 関心をもって学んでいきたいと思います。このたびの、 素晴らしいご企画に感謝申し上げます。
  • 一度は訪れてみたいと思っていたスーパーカミオカンデを見学でき、とても感動しました。世界をリードする宇宙物理学最先端の研究施設は、日本の誇りです。陽子崩壊、ダークマターの発見・・・ビッグニュースが待ち遠しいです。小柴さんに続いて、次のノーベル賞を大いに期待しています。
  • 先日はスーパーカミオカンデ見学会でお世話になりました。一般ではなかなか見学できない場所を見学させていただき、とても勉強になりました。
  • 前日の講義、誠にありがとうございました。ニュートリノについては理解が難しかったですが、前日の御講義がなければ、見学会だけの説明ではさっぱりわからない状態だったかもしれません。
  • 都会から離れた山奥で、国家予算により人類の未知を調査するために、多くの人々の技術と知恵が結集していることに感激しまし た。ここから発見されることが未来の人類にとって、役立てされることを願うばかりです。会社休日や定年退職後は、身近な中部大学の研究にお手伝いできるようなことがあれば、「大人のRIKA教室研究メンバー」として、お手伝いできる一員として活動できると良いと感じています。
  • 私は宇宙、天文に興味があり、個人ではなかなか入ることのできない世界に誇る施設を見学できてうれしく思いました。原子核よりもずっと小さいので、すべての物を通り抜けてしまうという不思議な物質、ニュートリノに重さがあることを世界で初めてスーパーカミオカンデで発見したことにより、ニュートリノが宇宙全体の重さを担っているかも知れないなど今後の研究成果に期待したいです。
  • 私も中学校・高校の頃は天文少年で小さな天体望遠鏡を担いで星座や月の写真を撮っておりました。宇宙開発でもレンジャー号による衝突しながらの月面撮影から、アポロ 11 号の月面着陸まで、ワクワクする動きがありました。もう、50 年近く前になりますが、その頃、カッパブックスか何かにニュートリノという素粒子が発見された。地球も通り抜けると書いてありました。ニュートリノという呼び名が良いのかよく覚えています。今回の世界最先端のスーパーカミオカンデ施設への訪問で、その研究の一端を感じることができ、当時の記憶ともつながり、感激しております。
  • あと、青いチェレンコフ光の説明がありました。学生時代に三浦半島にあった立教大学の実験炉で放射化分析の手伝いをしたことがあります。原子炉の上から中を覗くと幻想的な美しい光が見えていました。学生が小さな原子炉の回りを自由に歩き回れる安全に関してはおおらかな時代でした。今回、光が減速して粒子速度との差が出て光るのだとの説明を受け、今になって理解が深まりました。 帰りは、高山線猪谷駅まで、トンネルを避け。、旧道を 2 時間程かけて歩きました。神通川も今は清流でひと昔前の公害の痕跡など全くありませんでした。初秋の風景と里山の風景に接することができました。御手配ありがとうございました。
  • 個人的には一番楽しみにしていた見学会。期待通りのすばらしいものでした。「カミオカンデ」、「ニュートリノ」、「小柴先生のノーベル物理学賞受賞」見学会に参加するまではこの 3 つの言葉しか知らなかった私でしたが、前日の勉強会や当日の丁寧な説明でいろいろ教えていただきました。旧鉱山内に作られたスーパーカミオカンデを実際に見た時、観測を続けられている人たちのニュートリノへの情熱を感じると同時に、最先端の研究が日本で行われていることを誇りに思いました。この観測所で次にどんな大発見があるか、とても楽しみです。
  • 飛騨の山奥でトンデモナイことをやっている人たちがいるらしい。いったい、どんなところでどんなことを? シニアになっても、学生のようなドキドキワクワク感で臨んだ。見学を終えて「鉱山という歴史の残骸が、これからの世界の歴史を作ろうとしている」という不思議な感覚に見舞われた。実は電車とバスを乗り継いでこの地にたどり着いた。見学会終了後はカミオカの街を散策もした。神岡城の殿様は、まさか将来この街が世界的に有名になろうとは想像すら出来なかったであろう。宇宙線の謎を解き明かそうと、世界をリードする最先端の研究や国際共同実験が行われたり、宇宙の始まりから現在に至るまでの様子を探ろうとするエネルギーが、この街のどこに存在しているというのか。
    折しも周囲の山々はこれから真っ赤に燃える紅葉を前にしてエネルギーをため込んでいるかのような静かなたたずまいだった。スーパーカミオカンデ等歴史的実験場を垣間見、説明を聞く中で、答えはすぐに分かった。それはカミオカの歴史と人類の叡智の結集の接点にあるのではないか。加えて「宇宙、地球、個人の生命が一直線に繋がっている」ことがよく理解できた。「私たちはどこから来て、どこへ行こうとしているのか」に思いを馳せる中で、現場に掲げられた有馬元東大総長の「宇宙線は天啓である」という言葉の意味合いが分かった気がした。小柴先生の発想もすごいが、私としては、地球の歴史と人類の叡智の結集を信じたい。日常を越えて宇宙にまで思いを巡らせる楽しい見学会であった。


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後援:春日井市教育委員会