大人の RIKA 教室

平成 29 年春期 3 回 6 月 10 日 (土)「寄生虫の生き方から学ぶ」

講演会お知らせ
日時
平成 29 年 6 月 10 日 (土) 14:00~16:00
場所
中部大学 611 室
講演者
中部大学 応用生物学部 環境生物科学科
長谷川 浩一 氏

線虫と人との関わり(例、ギニアワームの感染サイクル)

ギニアワームの生涯サイクル
ギニアワームによる障害
ギニアワームによる障害
ギニアワームによる障害

2015年のノーベル生理学・医学賞は、アフリカ諸国で多くの人々が苦しんでいる線虫病に対する医薬品の開発とその普及に貢献した大村智氏に贈られた。

一方、線虫は究極のモデル生物であり、多くのノーベル賞受賞対象の生物学的研究が行われてきた。

その特徴は

  • 体長やく1 mmの動物(もちろん多細胞生物)
  • 神経、腸、筋肉、表皮、生殖器、といった動物の基本的な器官を有する
  • 雌雄同体(5AA+XX)と雄(5AA + XO)の性がある
  • 100 Mbのゲノム中におよそ2万の遺伝子がある
  • 大腸菌を餌に増殖し、卵から3日で大人になり、寿命は数週間と早い
  • 細胞が透明で、生きた個体まま細胞の様子を観察できる

であり、研究には

  • 細胞分裂(減数分裂、体細胞分裂)
  • 胚発生、組織分化、形態形成
  • アポトーシス(プログラム細胞死)
  • マイクロRNA
  • 病原微生物に対する免疫応答
  • 毒物に対する生体防衛反応
  • 学習と記憶
  • 寿命と老化
  • 生物進化
  • 宇宙開発
    など

がある。

講演後の質問および回答

Q1
痩せた人には蟯虫がいると考えられるのか?
A1
ヒトの健康を損ねるほど蟯虫が栄養を取ることはないので、痩せた人に蟯虫がいるとは考えられない。戦前戦後の貧しい時代、栄養不足のヒトにたくさんの回虫(蟯虫ではなく)が寄生した場合、死に至ることはないにしても、貧血などといった体の不具合が出てくることはあると言われている。
Q2
花粉症と蟯虫の関係は?
A2
アレルギーと寄生虫との関係について、清潔すぎることがアレルギー等の増加原因であるという「Hygiene Hypothesis:衛生仮説」は昔から言われており、最近その仮説を支持する知見・発見が多く発表されてきている。花粉症も、多くの現代人を悩ますアレルギーであり、寄生虫との関連についての研究も進められているが、まだはっきりと結論は出ていない。
Q3
寄生虫をなくすと悪いことが生じるか?
Q4
寄生虫との共生はどの程度が良いのか?
A3, A4
寄生虫は宿主の体内でしか生活できないため、宿主が病気になってしまったり死んでしまったりすると困るものである。自然界の動物を見てみると、ある寄生虫グループの仲間が普遍的に安定的に寄生していることが多くみられる。したがって、宿主と寄生虫との間で助け合って生きている「相利共生関係」があるのではないかと考えられている。もし寄生虫がなくなってしまったら気付かぬうちにヒトにとって悪いことが生じる可能性も考えられるし、まさにアレルギーがその一つではないかと考えられている(上述のとおり研究途上である)。ところで、宿主を病気にしたり死亡させたりする生物は病原体であり、寄生虫と区別すべきである。


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講演の様子
後援:春日井市教育委員会